それでも、放置しますか?待ったなしの空き家問題
近年、空き家が増加し、年々数が積みあがっています。
空き家増加の背景には、少子高齢化や人口減少、過疎化など。
さまざまな要因があり、社会問題となっています。
その現状について、確認してみましょう。
総務省が5年ごとに実施している「住宅・土地統計調査(平成30年)」によると、空き家数は846 万戸、空き家率(総住宅数に占める空き家の割合)は13.6%と。いずれも過去最高になっています。
下記の都道府県別空き家率をみてみると、最も高いのは山梨県(21.3%)。
次いで和歌山県(20.3%)、長野県(19.5%)。
そして、最も空き家率が低いのは、埼玉県と沖縄県(10.2%)。
次いで、東京都(10.6%)、神奈川県(10.7%)、愛知県(11.2%)です。
都道府県別空き家率
RANK | 都道府県 | 空き家率 |
1 | 山梨県 | 21.3 |
2 | 和歌山県 | 20.3 |
3 | 長野県 | 19.5 |
4 | 徳島県 | 19.4 |
5 | 高知県 | 18.9 |
5 | 鹿児島県 | 18.9 |
7 | 愛媛県 | 18.1 |
8 | 香川県 | 18.0 |
9 | 山口県 | 17.6 |
10 | 栃木県 | 17.4 |
11 | 大分県 | 16.7 |
12 | 群馬県 | 16.6 |
13 | 静岡県 | 16.4 |
14 | 岩手県 | 16.1 |
15 | 岐阜県 | 15.6 |
16 | 岡山県 | 15.5 |
17 | 鳥取県 | 15.3 |
17 | 宮崎県 | 15.3 |
19 | 三重県 | 15.2 |
19 | 大阪府 | 15.2 |
19 | 島根県 | 15.2 |
22 | 広島県 | 15.1 |
22 | 長崎県 | 15.1 |
単位:%
RANK | 都道府県 | 空き家率 |
24 | 青森県 | 14.8 |
25 | 茨城県 | 14.7 |
25 | 新潟県 | 14.7 |
27 | 石川県 | 14.5 |
28 | 福島県 | 14.3 |
28 | 佐賀県 | 14.3 |
30 | 奈良県 | 13.9 |
31 | 福井県 | 13.8 |
32 | 熊本県 | 13.6 |
33 | 秋田県 | 13.5 |
34 | 北海道 | 13.4 |
34 | 兵庫県 | 13.4 |
36 | 富山県 | 13.2 |
37 | 滋賀県 | 13.0 |
38 | 京都府 | 12.8 |
39 | 福岡県 | 12.7 |
40 | 千葉県 | 12.6 |
41 | 山形県 | 12.0 |
42 | 宮城県 | 11.9 |
43 | 愛知県 | 11.2 |
44 | 神奈川県 | 10.7 |
45 | 東京都 | 10.6 |
46 | 埼玉県 | 10.2 |
46 | 沖縄県 | 10.2 |
今度は、日本地図で地域の傾向をみてみましょう。
四国地方では4県とも空き家率が18%超となっています。
そして、西日本ほど空き家率が高い傾向がわかります。
出典:総務省「平成 30 年住宅・土地統計調査住宅数概数集計」より「空き家率-都道府県」
空き家になるメカニズム
空き家は、なぜ問題なのかというと、居住者を失い管理が行き届かず、防災上、衛生上、景観上などの観点からさまざまな悪影響を及ぼすためです。
では、どうして空き家になってしまうのかというと、空き家所有者の年齢構成に原因があります。
国土交通省が実施している「2019年空き家所有者実態調査」によると、空き家の所有者の78%が60歳以上。
親から子が実家を相続しても、子には別に住まいがあり、誰も住まないままで、空き家が発生しまうケースがひとつ。
そして、もうひとつは、立地の問題によるケース。
売却や賃貸に使える立地の良い物件であれば、活用できるものの、最寄り駅から距離のある場合、活用が難しくなります。
事実、空き家の約4割は、最寄りの鉄道駅から2,000m以上離れているのが現状です。
出典:国土交通省「令和元年空き家所有者実態調査集計結果」より
空き家にしておく理由って?
では、なぜ、空き家のまま放置しているのかというと、以下の通り。
一番の理由は、「物置として必要」が60.3%。
そして、「解体費用をかけたくない」が46.9%、「さら地にしても使い道がない」が36.7%と続きます。
出典:国土交通省「令和元年空き家所有者実態調査集計結果」より
注目したいのは、25.6%の「取り壊すと固定資産税が高くなる」。
これは、通常、居住用の建物が建っている場合、特例措置により、その敷地の「固定資産税」が最大6分の1に、「都市計画税」が最大3分の1に軽減されるという認識からですね。
ご存知ですか、特定空き家の指定で税金UP
しかし、2015年から自治体により「特定空き家」に指定されると、特例措置の対象外となり、税金の特例が適用されなくなりました。
「特定空き家」というのは、放置していて、周辺に危険を及ぼす可能性があると認定された空き家。
かなり放置された状態の空き家とはいえ、そうなる前に対策をとるべきです。
相続したのちに、空き家となった場合に使える特例制度もあります。
この特例は、譲渡所得から最高3,000万円を控除できるというもの。
16年に導入されています。
ただし、条件が厳しく、期限もあるため、ご注意ください。
問題は空き家だけではありません
また、空き家だけでなく、以前のブログ「民事基本法制を見直し、相続登記を義務化へ」でも触れている通り、「所有不明土地」の問題もあります。
所有者不明土地とは、法務局の登記簿を確認しても、その土地の持ち主がわからず、わかっても連絡がつかない土地のこと。
所有者不明・相続手続きが取られていない土地は、公共事業を行う時に、所有者を特定するのに時間がかかり、東日本大震災後の復興事業などに大きな影響を及ぼしました。
そうした問題を解決すべく、関連法が成立しています。
今年4月には、3年以内の相続登記を義務化。
2022年には、所有者不明土地特措法を改正し、空き地など使われていない土地の活用を促す公的な仕組み「ランドバンク制度」の創設を目指しています。
都心部では建築基準法上の問題も
空き家の有効活用をする上で、改めて把握しておきたいのが法令上の制限。
例えば、東京23区には、既存の建物を壊して新たに建築できない「再建築不可物件」が24万2600戸(総務省による平成30年住宅・土地統計調査より)存在しています。
これは、東京23区の住宅数の4.9%。
再建築ができない主な理由は、建築基準法上の道路に接していないため。
こうした場合、周囲との関係や建物の状況から対策を考えなければなりません。
助手・とん
再建築不可の物件。
むかえ
とは言いながら、接道義務を果たさなければ、絶対に建て替えができないのかというと、必ずしもそうとも言い切れない。
不動産で悩んだら、とにかく幅広い知識やノウハウがある方に相談するのが一番です。
また、「空家等対策計画の作成及び変更並びに実施に関する協議を行うための協議会の構成員」として、不動産鑑定士があげられています。