
とん助手です。今日は不動産の少し専門的な話から離れて、私の地元・練馬〜杉並の思い出話にお付き合いください。
高校時代、新学期になると訪れていた書店があります。
それは、上石神井駅近くにあった本屋さん「雄峰堂書店(ゆうほうどうしょてん)」です。
高校指定の教科書を買うために訪れたかすかな記憶があるのですが、書店の棚を眺めていて、ある発見に胸が躍ったのを覚えています。
そこには、なんと「早稲田大学高等学院(早大学院)」の教科書もずらりと並んでいたのです。
「へぇ、ここって早大学院の教科書も扱っているんだ……!」と気づいた瞬間、なんだか自分も少し背伸びできたような、ちょっとした誇らしさを感じていたものでした。
石神井の風が運ぶ「早稲田」の気配と、身内のような愛着
当時の私の最寄り駅は石神井公園駅だったので、通学はいつも自転車(チャリ通)。四季折々の自然が美しい石神井公園の脇を、自転車で風を切りながら駆け抜けていくのが毎日の日課でした。
その道中、公園の周りをランニングしている生徒さんたちとよくすれ違いました。部活の練習なのか、お揃いのジャージを着て汗を流しているその姿は、まさに早大学院の生徒さんたち。
高校生の頃の私にとって、「早稲田」という名前は雲の上の名門校というよりも、毎日の通学路でジャージ姿とすれ違ったり、地元の本屋さんで同じ棚の教科書を買ったりするような、ごく身近な「日常の風景」だったのです。
私は野球と並んでラグビーも好きで、社会人になってからも時々観戦に足を運んでいました。忘れられないのが、当時五郎丸歩選手がバイスキャプテンを務めていた頃の大学選手権の決勝戦、早稲田対慶応の熱戦を観に行ったときのことです。一緒に行ったのは、立川出身(西武拝島線の武蔵砂川が最寄り)の友人。早稲田の出身でもない西武沿線育ちのふたりなのに、試合が始まると自然と「行けー!早稲田!」と熱く応援していました。
そして見事勝利を収め、そのシーズンの頂点(日本一)に立った瞬間に響き渡ったのが、早稲田ラグビーの第二部歌『荒ぶる』でした。
この『荒ぶる』は、ただの勝利の歌ではありません。全国大学選手権を制し、大学日本一に輝いた歓喜の瞬間にしか歌うことが許されない、特別すぎる歌なのです。過酷な練習を乗り越えて頂点に立った選手たちだけが口にできるその歌声を耳にしたときは、やはり胸が熱くなりましたね。ユーミンこと松任谷由実さんの曲『ノーサイド』の歌詞が心に刺さる性分というのもありますが、彼らの日々の努力や汗を目の当たりにしていたからこそ、大人になってもついつい「身内」のような愛着で肩入れしてしまうのだと思います。

あの日耳にした『荒ぶる』の感動と、歓喜のスタジアムの熱気
街が重ねる記憶と、数字に表れない「土地の物語」
石神井公園〜上石神井エリア、および練馬区・杉並区・武蔵野市が隣り合うこの境界線付近は、行政区を跨ぐごとに街並みがグラデーションのように変わり、どこか落ち着いた品格と学生たちの活気が同居する独特の「文教エリアの空気感」が漂っています。
時代とともに雄峰堂書店のように姿を変えた思い出のお店もあれば、2002年に上井草へ「早稲田大学ラグビーグラウンド」が移転してきて新しい活気が生まれたりと、街は少しずつ変化していきます。
けれど、「あのお店がずっとそこにあった」「あの場所で学生たちが汗を流していた」という街の記憶やストーリーは、形を変えても地域全体の底流にしっかり残り続けていきます。
実はこれ、不動産鑑定士である代表が日頃から何よりも大切にしている「地歴調査」の精神にも深く通じるものなのです。
土地というのは、単なる「坪数」や「駅徒歩〇分」というスペックの数字だけで測れるものではありません。長い年月の中でそこに住む人々が歴史を刻み、文教の気配や地域への愛着、学生たちの活気といった“目に見えない資産”を重ねてきた場所だからです。

行政区の「境界線」に立ち現れる、街の地歴とローカルグラデーション
練馬・杉並・武蔵野の境界線が複雑に入り組むこのエリアは、不動産の視点から見ても非常に興味深い地域です。
区界は地図上できっぱり引かれていますが、人々の生活圏や空気感は境界を越えて緩やかに混ざり合っています。石神井公園の自然、早大学院などが醸し出す文教の気配、後年加わった上井草グラウンドのスポーツカルチャー。これらが融合し、行政の枠を超えた独自の街のアイデンティティが育まれてきました。
不動産評価では駅徒歩分数などのスペックが基準となりますが、暮らしの満足度を左右するのは、境界線上で長年育まれてきた「ローカルな空気感」です。
目に見える数字の裏にある「街の記憶」や「地歴のグラデーション」に目を向けること。それこそが、土地が持つ真の価値を見極めるための第一歩なのだと感じます。

(次回は、井草高校ゴルフ部誕生秘話と、白金のほろ苦い思い出をお送りします。お楽しみに!)
▼ ほかの「MEMORY JOURNAL」も読む

とん助手 (とんじょしゅ)
練馬育ち | 宅地建物取引士
練馬で育ち、この街の変遷や歴史(地歴)を肌で感じながら育った宅地建物取引士。「誰もが売り込まれずに、安心して本音を話せる場所を作りたい!」という自身の経験から生まれた強い想いで、皆様の相談窓口を担当しています。
地元の細かな道から学区のブランド価値まで知り尽くす生粋の練馬っ子ならではの視点で、難しい書類や手続きも優しくナビゲート。
ブログでは、地元の愛おしい記憶を言葉に紡いでいます。
土地が持つ真の価値を見極めるための第一歩 とは…
単なるスペックの数字(評価)を追うだけでなく、その土地で重ねられてきた「暮らしの記憶」や「街の空気感」にまで心を寄せること。
丁寧な地歴調査を通じて、ひとつひとつの土地が持つ本当の価値を見つめ続けるのが、私たち「むかえ不動産鑑定事務所」の誇りです。
➔
➔


